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★DIVA降臨
まさかこれを着ろって言うんじゃねえよな。マスタングさんよ。
そのまさかだ、エドワード。早くしないとステージがはじまってしまうよ。我侭お姫様。
誰がお姫様じゃー。つうか、我侭はあんただろうが。ゴラァ。
こめかみにキリキリと怒りマークを貼り付けて。
なりは小さいが破壊力抜群の活火山が爆発するまであと5秒といったところか。
付き合いの長いハボックたちには、それでも最終的にどちらが勝ってしまうかなど分かりきったことなのだ。
大将が我侭お姫様なら、筋金入りの我侭女王様だろう。我らが敏腕プロデューサさまは。
そうしているうちに、どう丸めこまれたのか、女装なんて女装なんて・・・とブツブツ言いながらも社長の選んだ衣装(真っ白いフリフリドレス★所謂ゴスロリ風ってやつ)を着込んでいる。そう。俺達のバンドが新しい歴史ってやつを刻むその瞬間まであとわずか。
突然社長が連れてきた子供はちっこくてやたらと綺麗な顔で、どこのお人形さんかと思うぐらい見目麗しい子供だった。仕事を選びまくる困った社長のせいで零細から一歩も抜け出せないうちの音楽事務所も、とうとうイケナイ路線へ転換かとえらく感慨深くなったものだ。(ただし、その5秒後に、最初の印象が完全消去するくらい凶暴なお子様であることが判明したが)
「ハボック。お前はクビだ。今日からこの子が【Metal Dogs】のボーカルになる。」
「えー。どういうことっすか。社長」
うちのバンドは実力派といわれながらも、メジャーシーンにのし上がれないまま早3年。少しばかりならファンだって存在しているものの、確かに売れているとは言いがたい。だからって、いきなりメインボーカルのクビを切るか普通。
「大体こいつ、子供じゃないっすか。いくらなんでもガキには無理っしょ。」
「ガキ扱いすんじゃねえ。おっさん。」
吊り上がり気味の眼に強い光が灯るだけで、綺麗な顔はいとも簡単に凶悪化して。
社長の制止が入らなければ、10近くも年下のガキにボコられるところだったなんて、田舎の悪友どもには絶対ばらせない過去ができた日だった。
いつものライブハウスの何十倍は大きなステージ。
キャパなどはゼロが2つは違う。
「やるときだけはやる」うちの社長が用意したのは、売れないバンドには立つことなど到底かなわないアリーナクラスの会場だった。
昨今の売れ筋バンドばかりを集めたイベントの前座という位置に、俺達を滑り込ませたのだ。本来なら、前座と雖も300人規模のライブハウスでゆるゆるとやっているバンドが立てるステージではない。
「どもー。【Metal Dogs】ですー。」
自分でも売れない漫才師か!と突っ込みたくなるような挨拶をしてステージの左(俺の新しい定位置だ)へ出ると、案の定客の無関心がビシバシと伝わってきた。そりゃあ皆、早くご贔屓のバンドが見たいに決まってる。だが、せっかくの舞台。此処で目立たない手はないのだ。何といっても今日からの俺達には歌姫(いや、姫って言うと怒られるが、今日のあの衣装なら、、、なぁ)がついている。
すぅと息を吸い込んだ。
「オレたちのDIVAを紹介します。エドワード・エルリック!」
ドンと落とされた照明を切欠に、フュリーがプログラムした幻想的なシンセ音が響き渡る。
スポットがステージの中央へ射すと、そこに白いドレスを身に纏った可憐な歌姫が現われた。
小さな口からは、なんとも中性的なアルトでオペラの一節が奏でられる。
客たちが一斉に息を呑む音が聞こえた。どうだ、オレたちの歌姫は綺麗だろ?
うっとりとした溜息が会場中に広まるのを確認して、俺は思いっきりアームに手を伸ばした。
ギュイーーーーン
アンプから響く心地よいギター音を合図にブレダとファルマンのリズム隊が激しいリズムを刻みはじめる。
「ついて来いよ、おめーらっ」
厳かですらあった雰囲気を一瞬で消し去ったエドワードが客席に向かって跳ねた。
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