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★悪魔と生贄〜出会い編
仕事で立ち寄ったとある地方都市で。
少しばかり音楽を聴きながら酒を飲みたくなり、宵闇をふらりふらりと歩いて見つけたのは、小さな小さなライブBAR。
「本日ライブあり」との控え目な張り紙に惹かれて、重い扉を押し開けた。
そこは普段なら落ち着いたジャズや往年のロックを聴かせるBARなのかもしれない。オールディな内装の小さなバーカウンタがそれを物語っている。そして、おそらく客の主目的はライブ演奏を聴きながらの「酒」の方なのだろう。客たちはステージの方を向くでもなく、銘々にグラスを傾けている。
にもかかわらず。扉を開けた瞬間からガンガンと鳴り響いているのは場に不似合いな重低音のギターとベースだった。断じて雰囲気のよいジャズなどではない。しかも、もう大概よい時間だというのに、爆音に負けじと、身体全体を使って声を張り上げるのは小さな身体の少年で---。
少し高めのアルトが、がなる、怒鳴る、叫ぶ。
演奏のレベルは悪くない。
ただ、印象は?と問われれば、「不調和」のひと言に尽きた。
演奏されている曲は所謂ハードコア系というやつだったが、その暴力的な音とマッチしないのだ。少年の声は。
それでも少年から眼が離せなかったのは、がなり声の隙間に垣間見せる透明な声と、興奮で白皙の肌を高潮させ色気すら醸し出している中性的なその容貌のせいだった。
ガシャン
突然、客席からステージへ酒瓶が投げ込まれた。
「さっきから雑音ばっかり聞かせやがって。うるせーぞ。」
声を上げた客は案の定酔っ払いらしく、なにやらブツブツと文句を垂れ流す。
それでも構わず演奏は進んでいた。良くあることなのだろう。ボーカルの少年もバンドメンバー達も動じる気配はなかったのだが。
「こら、きいてんのか、このチビ!」「誰がチビだとこらーーーーー」
小さいと言うことはば、どうやら少年のNGワードらしい。チビっていったヤツぶっ殺す。と、突然ステージを下りた少年は酔っ払いに食って掛かかった。
「雑音じゃねえよ、こちとら、ロックやってんだよ、ロック。お分かり?」
ぎゃーぎゃーとわめき散らしながら暴れる火種は数少ない他の客にも飛び火して、気がついたらライブハウス中をひっくり返す乱闘騒ぎとなっていた。
場離れしているらしい少年は客の攻撃をするりとかわして、お返しに嬉々としてハイキックを見舞う。鮮やかに相手を床へ沈ませると、次なる獲物を求めて視線を彷徨わせている。
見ているだけで胸がすく。気分が高揚してやまない。
思わずニヤリと笑みを洩らして、マスタングは気がついてしまった。
ずっと欲しかったものを思いかけず見つけてしまったことに。
そうと決まれば、行動は迅速に。
マスタングは騒動の中をすたすたと少年に歩み寄ると、その腕をがっしりと掴んだ。
私と一緒に行かないか?
真っ直ぐに見つめる闇のように黒い瞳は艶やな蠱惑の光を放って。
魔に魅入られたごとく、少年は思わず男の手を取ってしまった。
これが、とある音楽プロデューサと少年の出会い話。
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