◇自覚






いつもは起きて待っていてくれるのに。
疲れてソファーで眠ってしまった彼女を見下ろす。
手には専門外の錬金術の書。二人で暮らすようになってから、錬金術や政治・軍事・産業・・・さまざまな分野についての議論をかわすことが多くなった。白熱すると、時間を忘れて。相手に負けたくなくて、ここの所サボり気味だった知識の収集活動も活発になった。休みの日は、リビングの思い思いの場所に陣取って、会話も交わさぬまま、お互いに本を読んで過ごすなんてこともしょっちゅうだ。

いつから自分はこんなにも人に心を許せるようになったのだろうか。ふと、そう思う。
自分が変わったのか?否。おそらく、相手がエドワードだからだろう。
こんな存在はいままでいなかった。無二の親友ならいたが。自分と対等で、かつ、くつろげる存在。
閉じた眼の、びっしりと生えた金色のまつげがさやさやと揺れる。彼女はもう少年には見えない。
隠す必要のない彼女の性は、急激に本来の年齢に追いついていた。
このごろはほんとに綺麗になったと、ハボックあたりが騒いでいるのを、そんなはずは無いと今日も否定してきたはずなのに。
(触れたい。)
今まで感じたことのない衝動は、どう制御すべきものなのか。
窓から差し込む月の光を金の髪に受け、すやすやと眠る少女を前に、マスタングは暫く立ちすくんでいた。




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