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◇無能?
ロイ・マスタングという男が、見た目ほどクールでも器用でもないことは知っていた。では、私生活は?
同居(?)初日。
何故、自分が元上官(それに、超を10個並べてもおつりがくるような女たらし)と一つ屋根の下暮らさなければならないのか。これまで性別を偽っていたとはいえ、今回の件で、エドワードの本来の性別は世間的に認識されたはずである。これも、軍による嫌がらせなのか。もしくは、いけ好かない上司の???
とにかく、エドワードは憤慨する気持ちをそのまま元上司へとぶつけた。
「何でオレがあんたと一緒に暮らさなきゃならないんだっ!」
「私だってねえ、好き好んで色気のないお子様となんか暮らしたくはなかったよ。」
ここへ来て胡散臭い笑みを消した元上司は、面倒くさげに首を振った。
「大総統からの命令だ。私でも逆らうことは出来ん。それに・・・365日、一個師団に監視されるよりはましだろう。私の家にさえ住めば、終日監視はナシでよいというのだ。君にとってこんな良い話はないだろう・・・。ああ、それに、安心したまえ。何を警戒しているか知らないが、昨日まで男にしか見えなかったようなお子様には、間違っても手など出しはしないから。」
「だれが色気ゼロのハイパーミジンコどチビだーーーーーー!」
エドワードがお約束のように暴れるのに構わず、男は疲れたように肩をおとしてリビングを去ろうとする。
「私だってねえ、今までプライベート空間に人など上げたことはなかったのだよ。妥協してくれ。」
情けなない顔をして弱弱しく笑ったマスタングに少しだけ心が痛くなったエドワードだったが、彼が自分の保護監察役と引き換えに1つ上のポストを大総統より約束されたことを知り。マスタングへの遠慮など一切しないことを誓うこととなる。
かくして、親子ほど年は離れていないが、兄弟というには離れすぎた、かといって恋人という甘い関係など欠片もない不思議な同居生活が始まった。
それなりの稼ぎがあるのだよと、家主は家賃を受け取ろうとしないため、その代価にと、エドワードは自然と家事を担当するようになった。旅をしていた頃は深夜遅くまで本を貪り読んだりして生活のリズムが乱れがちであったが、学業と家事をこなす為には、早起き必須。エドワードはキチンと朝起きる。
一方のマスタングはというと。これまでの生活がとにかくだらしなかった。
威厳ある高官であるはずの男は朝に滅法弱いらしく、とにかくぎりぎりまで寝穢くベッドで過ごす。簡単な朝食すらかきこむ余裕もないくせに珈琲だけは優雅に飲み、寝癖のついたそのままの頭で出勤していく(そして車の中で部下にどやされながら身づくろいする)生活を送っていたらしい。寝るときも、疲れて帰ってバタンキュー。軍服の皺も物ともせず。不規則な就業形態だから軍部に缶詰となる日も多い。風呂にも入らず、無精髭を伸ばし放題の日だって多々あったようだ。
(まったく、街のお嬢さんたちが知ったら、100年の恋も冷めるってもんだぜ。)
生来の長男(?)気質でエドワードあれこれと世話をしているうちに、男の生活も大分規則正しいものとなっていったが、いい加減に見えて、その実、万事キチンとしていないと気がすまない性質であるエドワードには、まだまだ手の掛かる子供のようなもので。トーストと卵料理程度の軽いものながら、朝食も食べるようになったし、どんなにくたくたでも必ずシャワーを浴びて寝るようになったが。そんなこと、そもそも、エドワードから言わせたら、至極「当たり前」のことなのだ。
そして。街のお嬢様といえば・・・お盛んだと聞かされていた男の女漁りが意外にも成果を上げていないことにも、エドワードは気がついてしまった。粉をかけている女性の数は確かに多い。昔から二人で街を歩くと、何処かしらのお嬢さんに声を掛けられる。または声を掛ける。そんなだから、夜は帰ってこない日も多いのではと、当初は推測していたのだ。
だが、現実は・・・どうやら忙しすぎる職業のせいか、はたまた懲りない浮気性のためか、最初は彼に熱を上げていたと思われる相手から、わりとあっけなく振られる。そして、みっともないくらいにしょげて帰ってくるのだ。
女々しく泣く、マスタングの姿に、エドワードが溜飲を下げたのは間違いない。(あんまり度重なるので、最近は鬱陶しいだけとなったが。)
そんなこんなで、最初はどうなるかと思ったマスタング邸の暮らしだったが、あまりのダメっぷりを発揮するマスタングに窮屈や息苦しさなど一切感じなくて。むしろ家族と暮らすような気安さすら感じ始めるエドワードであった。
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