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★ライブは本気で
満を持して発売したアルバムがメガヒット。メディアにも散々取り上げられれば、当然のごとく、ライブチケットは発売即完売。
否が上でも期待の高まる【Metal Dogs】初のホールツアーのリハーサル直前、エドワードは鏡の前にちょこんと座らされていた。
「痛い、痛い。あんまり高いトコで縛ったら、痛いってば。」
「ちょっとだけ我慢してね。これだけ高く結んでおけば背が高く見えるわよ。」
「ホントっ(喜)」
普段はあまり表情を動かさないホークアイが、ウキウキとでも表現するしかないオーラを醸しだしながら、エドワードの髪をいじっている。金色の長い髪の一部を頭の斜め上辺りの位置で括っているのだが、ぴょこんぴょこんと揺れるその髪は、着ている衣装と相まってカッコいいというよりは「可愛いパンク少女」といった風情。
今日のエドワードの衣装もホークアイが気合を入れてチョイスしたものだ。
髑髏やらハートやらイーグルやら王冠やらがデザインされた所々に裂け目のあるTシャツに赤いタータンチェックのエプロンスカート付きパンツ。そして足元には(底がやたらと厚いことがエドワードを喜ばせた)白と黒の市松模様があしらわれたラバーソウル。古式ゆかしいパンクスタイルに、珍しくエドワードは機嫌がよい。
「なーなー。俺、すっげー渋くない?」
「そうね。」
自らを70年代のパンクスターに重ね合わせてご満悦のエドワードに、クスリと笑うホークアイが(やっぱり、すごく可愛いわ。後で写真取らなくちゃ。)などと考えていたことは誰も知らないお約束だ。
「おい。リハ、始めるぞー。」
バンドリーダーであるハボックが楽屋の外で呼んでいる。
さーて、そろそろいきますかと、腰を上げたエドワードは脇においていたギターを手に取った。
「待ちなさい。エドワード。」
ヘアメイクされるエドワードを黙って眺めていたマスタングが腕組みをしたまま声を掛けた。すぐにもリハーサルが始まるこの状況で、この男の戯れには付き合う暇はない。
「何?俺、リハ行かなくちゃなんねーんだけど。」
「分かってるよ。だから声を掛けたんだ。」
「で、何?」
「そのギターでいくのかい?」
「は?」
エドワードは手にしたギターを繁々と眺めた。黒いフライングVは、あらかじめホークアイから聞いていた今日の衣装に合わせて手持ちのギターから選び出したもの。プロである以上、舞台での見栄えも大切なのだと、エドワードに説いたのは当のマスタングのはずだ。
「これ、似合わねえ?」
誰にも告白したことはないが、エドワード自身、自分の美的センスに余り自信がない(他人から指摘されると反論するが)。悔しいけれども、センスだけは悪くないマスタングの言葉が気になるのも事実だ。だが、意外にもマスタングの指摘は見た目に対するものではなかった。
「今日はメロディラインを強調した曲目を中心に組んだはずだね。そのギターでは少々音質が重いのではないかね。」
エドワードは、うっ、と唸った。マスタングの指摘はもっともなのである。初ライブでは皆がノリノリになるような激しい曲目がチョイスされていたが、今日は【Metal Dogs】のもうひとつの売りであるメロディを聴かせる構成になっていた。特に今日初めて披露する新曲には、ハボックとのハモリが肝となっているものもあり、ギターと歌のバランスが非常に重要なのだということが改めて思い出される。
「・・・わかった。このギターは辞めるよ。」
エドワードは、素直にフライングVを下ろした。ライブ曲の練習中に使っていたギターも持ってきている。そちらなら大丈夫だろう。そう考えて、持ち替えようとしたところ、替えのギターも取り上げられた。
そして、マスタングが差し出したのは、黄色いストラトキャスター。
「こっちのギターの方が絶対かわいいと思うんだが。どうかね、リザ?」
ホークアイは力強くうなずいている。
「結局、見た目かよ!」
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