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★マース登場
トゥルルル---
「ハイ。フレイム音楽事務所です。・・・ええ、【Metal Dogs】のスケジュールは只今のところ・・・」
トゥルルル---
「こちらフレイム音楽事務所。アルバムの発売予定ですか。未決ですが、近日中には・・・。ハイ、その際には必ずご連絡させていただきますので・・・。」
すごいですねえ。反響。朝からずっと電話なりっぱなしですものね。
まあ、トリのバンド、喰っちまったからな。昨日のイベントでは。
ああ、もう、いっそのこと電話線引っこ抜いてやろうか。
せっかくの引き合いです。無碍なことをしてはいけませんよ。
新生【Metal Dogs】初のライブを成功させ、当然のことながらその晩の打ち上げは大盛り上がりで。明け方近くまで飲み明かしたというのに。
「今すぐ事務所へ来い。(がちゃり)」という、短くも強引なマスタングからの電話で早々に叩き起こされたメンバーは、社長秘書兼マネージャのホークアイと共に、朝からずっと電話応対に当たっていた。
相手は多種に渡っているが、主なところでは、レコード会社、テレビ局、雑誌編集者、一般のファン。全て【Metal Dogs】に対する問い合わせだ。
「うち(レコード会社)に移籍しませんか?」
「私どもの番組に出演してください。」
「音楽雑誌の取材ですが。」
「アルバムはいつ出るんですかー?」
などなど。
新生バンドのお披露目となったイベントは、環境保全を謳って、大企業やテレビ局が大々的にバックアップしたものであったため、非常に注目度の高いものであったらしい。メンバー達は出演してから、その影響力の凄まじさに驚かされた。
えーと。このネットニュースすごいですよ。エドワード君の紹介、もう載ってます。
どれ。あ、このライターって。
「よう。ロイ。景気はどうだー?」
ど派手な紫色の開襟シャツにこれまた派手な角ばった眼鏡の男が、ばたんと扉を開けて現われた。彼の名は、マース・ヒューズ。コアなRock好きの若者から支持されている某音楽雑誌を主な活動拠点とするライターで、玄人受けばかり狙いすぎる執筆陣にあって、ジャンルや体裁にこだわらない記事に定評がある。そして、音楽業界では数少ないマスタング社長の友人だ。
「マジでよかったぞ。昨日のライブ。」
「ああ、ちゃんと見に来たのだな。」
「当たり前だろうが。見も聴きもしないで、記事なんか書けるか。」
すっかり電話を取る手を止めて、マスタングがヒューズに応じている。見れば、丁寧な言葉で電話応対しているホークアイの眼が殺気を帯びている。それでも会話を続けられる2人は、ギギギとぎこちなく顔を逸らせたメンバー達と比べると、確実に大物だろう。
「曲もよかったが。しかし、すごかったな、これ。」
これ、といってヒューズが指差したのは、フュリーが覗いていた、マース・ヒューズ文責によるライブレポート。そこには、ドレスの上半身をはだけさせたエドワードの写真がでかでかと添えられていた。
---当日。
最初の演出にすっかり引き込まれた観客は、その後の【Metal Dogs】の音楽にもバッチリと反応して、会場内は前座バンドとは思えぬ盛り上がりを見せていた。そんな盛り上がりも最高潮に達した時、突然、エドワードが白いドレスを胸元から引きちぎった。
ドレスを着たエドワードは、殆どの聴衆から女性だと認識されていたため、当然、会場からは一斉に悲鳴が上がった。が、それもつかの間。ステージ上部に設置された液晶スクリーンにでかでかとエドワードの平らな胸が映し出された。
女装の美少年だったことに驚かされた観客のココロはすっかり【Metal Dogs】に占められてしまい。その後の出演者がすっかり霞んでしまったのだった---。
昨日のライブで力を使い果たしたのか、だるそうにソファーに沈んでいた話の主役がのそのそと顔を上げた。マスタングは、自然な動作でソファーの後ろ側に周り、背後からエドワードのしなやかな身体に手を回す。
「あ、あれは・・・あんたがあんな服着せるからっ。動き回ってたら破けたんだよ。脇からビリッと。んで、邪魔だったから・・・」
「いや、最高の演出だったよ。エドワード。君には生まれ持ったスター性があるのかな?」
金色の頭の頂きにキスが落とされる。
「ばかやろう。」
「ただし、もうやらないでくれたまえよ。いくら人気商売とはいえ、恋人の身体を人目に晒したいとは思わないからね。」
だれが恋人かーーー!と、いつもなら台風のごとく暴れるパターンで、エドワードは傍と動きを止めた。
「・・・っつうか、やばい。これ、全国に配信されてるんだよなあ。」
「ああ。インターネットだからな。勿論だが。」
「アルが・・・。アルが・・・。」
突然、顔を真っ青にしてガクガクと震えだすエドワードに、?となる面々。それが嵐の予告と気づく者は当然のことながらまだ誰もいないのであった。
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