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■ブティックにて
上流階級御用達のブティックの前に止まった一台の車。
国軍中将という地位にあるその男は、車中でドレスを物色する奥方を待っていた。
女の買い物はやたらと長い。だから、護衛代わりの部下を相手に、世間話でもして暇を潰すしかなく。おべんちゃらばかり遣う部下を相手にだらだらと自慢話などをしながら、そのとき彼の眼に入ったのは、反対側の歩道にたたずむ、黒髪の男だった。しなやかなスタイルながらもがっちりとした背中。白いシャツに黒いスラックスというシンプルな出で立ちであるにも拘らず、目を引くのは・・・道行く女性が一人残らず男に目を向けるからなのだが、それだけではない。その男の顔に見覚えがあったのだ。
「おや、あれはマスタングではございませんか。」
「おお、確かに。しかし、成り上がり者の末路は寂しいものだな。今は元部下の家に転がり込んでの居候生活だそうじゃないか。」
「居候とは。さすが将軍、思いやりのあるお言葉ですな。ようはヒモですよ。ヒモ。
奴の下にいた鋼の錬金術師、あれが実は女だったそうで。そこに転がりこんどるようです。」
上層部には、後ろ盾もなく、実力だけで成り上がったマスタングを快く思わないものが多かった。この中将もマスタングの突然の失脚に快哉を叫んだ口だ。マスタングの悪口は「かなり」楽しい。
「鋼の錬金術師と言えばくそ生意気な少年だと聞いていたが。
そうか、性別も分からんような女と付き合うしかないとは。名うてのプレーボーイも形無しだな。」
「「はっはっはっ。」」
矛先は今はもう軍の狗ではない、元国家錬金術師にまで及んだそのとき。
カランコロン。と。ドアベルが鳴り。
通りの向かいにある、若干若い者向けの、それでもそれなりに高級なブティックから美しい金色の髪をなびかせた若い女が現われた。
「ごめん。待たせちゃった?選ぶのに結構時間が掛かっちゃってさ。」
「だから私が選んであげようといったのに。」
「あんたが選ぶと・・・派手になるからやだ。」
「君の美しさに負けないドレスを選んでいるだけだよ。ああ、その荷物は私が持とう。」
先ほどまで噂されていた男が洗練された動作で、女の荷物を取り上げている。
フェミニストかく在りき。そんなマスタングの所作に微笑みで返す女の横顔もまた美しく。そんな二人に思わず見蕩れてしまったのが祟ったらしく、車中から覗く気配をけとられてしまった。
「ん、ありがとう。あれ?あの人たち見たことあるかも。」
「ああ、ホワイト中将閣下と側近のダラン中佐だな」
どうやら正体もばれてしまったようだ。将軍たるもの、こそこそ隠れ立ては出来ない。何てことを考える地点で、小者であること決定なのだが、とにかく引きつる顔でマスタングに声を掛けてみることにする。
「やあ、久しぶりだね。マスタング君。その後どうかね?」
「とても幸せですよ。可愛い人といつも一緒にいられますしね。」
「で、こちらのレディは?」
そう、そのレディが問題なのだよ。今では地位も名誉もないただの男。そんな男が相も変わらず極上の女を手にしているのは許せない。許せないったら許せないのだ。
「こんにちは。中将閣下。エドワード・エルリックといいます。」
「き、君はもしかして鋼の錬金術師、、、」
「ええ。(にこり)」
「・・・う、美しいお嬢さんだね。(敗北宣言)」
※えっと。エドワードさん、無事に国家錬金術師を辞めた後、大学で錬金術の研究をしてるんですが、どうやらこのたび一冊の本をまとめたようで、出版記念パーティー用のドレスを買いにきていたようです。←こっちの話のほうが、ちゃんとしたSSになりそうなんですが、このシリーズではマスタングのヒモっぷりだけに焦点を当ててお届けしようと思っております。(こんな背景説明ですみません)
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